スタートアップや未上場企業に投資し成長支援を担うベンチャーキャピタル(VC)は、転職先として人気が高い業種です。
本記事では、そもそもベンチャーキャピタルとは何か、ベンチャーキャピタルで働くメリット・デメリット、転職の際に知っておきたいポイントや成功のコツを解説します。ベンチャーキャピタルの転職に強いエージェント10選や、自分に合ったエージェントを見つける方法もご紹介します。ベンチャーキャピタルの転職に関するよくある疑問にもお答えしますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ベンチャーキャピタル(VC)とは
ベンチャーキャピタル(VC)とは、主に未上場の新興企業やスタートアップに対して出資を行う投資会社のことです。
ベンチャーキャピタルは、出資によって企業の成長を後押しし、出資先企業の株式を取得して、将来的にその企業が上場した際に株式を売却することで利益を得ます。
ベンチャーキャピタルは出資などの資金提供だけでなく、経営支援やコンサルティングなども担い、企業の成長や企業価値の向上につながる複合的な役割を持っています。
以下で、ベンチャーキャピタル業界の就職・転職市場、年収、主なベンチャーキャピタルについて解説します。
ベンチャーキャピタルの就職・転職市場
一般的に、ベンチャーキャピタルの就職・転職市場は狭き門とされています。加えて、ベンチャーキャピタルへの転職は人気があるため、求職者にとっては競争が激しい業界といわれます。
近年の市場をみると、2014年以降ベンチャーキャピタルの投資先となるスタートアップは増加傾向にあります。2023年は一旦減少していますが、政府・経済界の見込みとしては今後も拡大すると考えられています。
これに伴いベンチャーキャピタルの役割や投資範囲も拡大が期待されており、ベンチャーキャピタル業界に従事する人材も増加すると考えられます。
さらに、ITやテクノロジー関連では新しい企業が続々と登場し活躍していることから、新領域に対応できる知識や柔軟性を持った人材が求められる傾向にあります。
以上から、ベンチャーキャピタル業界は求職者側からみて採用難易度の高い業界ではありますが、採用も活発になっているといえます。
参考:財務省「スタートアップエコシステムの現状および DBJ特定投資業務の貢献について」
ベンチャーキャピタルの年収水準
ベンチャーキャピタルにおける年収は企業や企業が設定する役職によって異なりますが、一般的な水準は以下のとおりです。
パートナー/ディレクター/役員クラス | 1,500万〜2,000万円 |
マネージャー/部長クラス | 1,200万〜1,500万円 |
シニアアソシエイト/主任クラス | 800万〜1,200万円 |
アソシエイト | 600万〜800万円 |
上記に加え、企業によってはプロフィットシェアやキャリーボーナスが加わります。
ベンチャーキャピタルは、役職や成果によって年収に差が出やすいとされており、特に成功報酬に関しては市場にも左右されるため、変動しやすい特徴があります。
主なベンチャーキャピタル
一般的にベンチャーキャピタルは、金融機関系、独立系、事業会社系の3つの系統に分けられます。
金融系ベンチャーキャピタル
金融系ベンチャーキャピタルは、銀行や証券会社などの金融機関を親会社とするファンドで、具体的なものには以下があります。
大和企業投資 | 大和証券グループで、SaaS/クラウド、IT/DX、製造分野などに投資 |
ニッセイ・キャピタル | 日本生命保険の関連会社で、ITサービス、医療・バイオ分野などに投資 |
三井住友海上キャピタル | 製造業、インターネット関連、サービス分野などに投資 |
三菱UFJキャピタル | IT、ライフサイエンス分野などに投資 |
みずほキャピタル | IT、サービス分野などに投資 |
DBJキャピタル | ITサービス、バイオ&ヘルスケアなどに投資 |
SMBCベンチャーキャピタル | サービス、IT分野などに投資 |
SBIインベストメント |
フィンテック、AI、ブロックチェーン分野などに投資 |
独立系ベンチャーキャピタル
独立系ベンチャーキャピタルは親会社を持たずに独自の資本で運営しているベンチャーキャピタルです。具体的なものには以下があります。
JAFCO | 日本最大手のベンチャーキャピタルで、幅広い業界に投資 |
グロービス・キャピタル・パートナーズ | インターネット、AI、IoT、ブロックチェーン分野などに投資 |
ローバル・ブレイ | アーリーステージを中心にフィンテック、ヘルスケア分野などに投資 |
サムライインキュベート | 日本、イスラエル、アフリカ(ナイジェリア、エジプト、ケニア、ガーナ、ルワンダ、ウガンダ、南アフリカ)のシードステージの企業に投資 |
日本ベンチャーキャピタル | アーリーステージを中心に情報通信、医療分野などに投資 |
インキュベイトファンド | シードステージを中心としたフィンテック、ヘルスケア分野などに投資 |
フューチャーベンチャーキャピタル | アーリーステージを中心にサーキュラーエコノミー分野などに投資 |
日本アジア投資 | アジアなどの海外投資に強みを持つ |
事業会社系ベンチャーキャピタル
事業会社系ベンチャーキャピタルとは、大手企業などの事業会社が運営主体となっているベンチャーキャピタルのことです。以下のような企業がベンチャーキャピタル事業を営んでいます。
ソフトバンク | テクノロジー関連のスタートアップなどに対して大規模な投資を実施 |
楽天 | 革新的なスタートアップへの投資を実施 |
DeNA | モバイル・インターネットの分野でイノベーションを促進できるサービスを提供する企業に積極的に投資 |
KDDI | 「KDDI Open Innovation Fund」を通じて企業への支援・出資を実施 |
日本ユニシス | シード・アーリーフェーズのスタートアップに投資 |
伊藤忠テクノロジー | アーリーステージを中心にIT関連ビジネスに投資 |
サイバーエージェント | 日本・米国・中国・台湾・インドネシア・ベトナム・タイでシード・アーリーステージのスタートアップを支援 |
NTTドコモ | スタートアップ企業に投資を行い、スタートアップの構想実行力とNTTグループの社会実装力でイノベーションを狙う |
ベンチャーキャピタルで働くメリット・デメリット
ここまで説明してきたベンチャーキャピタルの特徴をふまえ、ベンチャーキャピタルで働くメリット・デメリットを解説していきます。ベンチャーキャピタルでの働き方の特徴を理解することが、自分に合ったキャリア選択につながります。
ベンチャーキャピタルで働くメリット
・高収入:ベンチャーキャピタルは他業界に比べ、年収が高いとされています。役職や成果に応じて高収入を得ることができる業界です。
・経営に関与できる:ベンチャーキャピタルでの仕事を通して投資先企業の経営にかかわることができるため、経営的視点が得やすいです。
・スキルアップにつながる:財務分析やビジネス戦略に関する知見や、幅広い業界に対する理解が深まります。ビジネス全般に通用するスキルが身につきやすい環境といえます。
・やりがい:企業の成長を支援するやりがいや達成感を得られます。
ベンチャーキャピタルで働くデメリット
・安定性が低い:ベンチャーキャピタルの事業である企業への投資は、それそのものにある程度のリスクが伴います。投資が失敗するケースがあり、安定性が高いとはいえず、自社が資金的なリスクを抱える可能性もあります。ただし、「リターンが大きい仕事」という特性が、やりがいにつながるという声もあります。
・成果を出すことへのプレッシャーがある:ベンチャーキャピタルでの仕事は、中長期的な目線で見たときの成果を求められることが多いため、プレッシャーの大きい仕事といえます。ただし、前述のとおり成果に対する報酬が大きいため、プレッシャーや責任に見合っていると感じる方も多いです。
・競争性:ベンチャーキャピタルは業界内の競争が激しいといわれます。加えて、個人の成果を重んじる傾向にあるため、高いパフォーマンスを発揮する人材が評価されやすく、競争意識が高いといえます。仕事を通じた成長を大事にする方に合った環境ともいえます。
ベンチャーキャピタルの転職で知っておくべきポイント
ベンチャーキャピタル(VC)への転職を考える際には、以下のポイントを理解しておくことが重要です。
・求められる人物像
・求められるスキルや経験
・ベンチャーキャピタルの応募要件・選考内容
それぞれについて詳しく解説していきます。
ベンチャーキャピタルに求められる人物像
ベンチャーキャピタルでは次のような人材が採用されやすい傾向にあります。
・コミュニケーション能力が高い:ベンチャーキャピタルの仕事においては、起業家や他の投資家など業界内外の方と接する機会が多くなります。円滑なコミュニケーションがとれる人材は重要視されます。
・好奇心がある:業務に関する知識はもちろん、さまざまな業界やビジネスモデル、技術などに興味関心を持って知見を広げられる人が求められます。
・柔軟性がある:ベンチャーキャピタルが対峙する市場は、変化の激しいものといえます。そのときどきの環境を見極め、適応し、柔軟に判断や決断を行える人材が重用されます。
・決断力がある:ベンチャーキャピタルでの仕事においては、個人が投資判断などに責任を持つ場合があります。業務の性質上、ある程度のリスクもある状況下で決断できる能力が重視されます。
・長期的な判断ができる:そのときどきの決断力が求められる一方で、投資先の企業や自社について中長期的な視点で判断する力も重視されます。
ベンチャーキャピタルで求められるスキルや経験
続いて、ベンチャーキャピタルで求められる具体的なスキルや経験を解説します。
・分析力:ベンチャーキャピタル市場や企業のデータを分析し、投資判断を下す能力が求められます。
・財務分析スキル:財務諸表などを理解し評価する能力が求められます。また、財務分析のスキルをあらわす資格には公認会計士や税理士、簿記、証券アナリスト、MBAなどがあり、こうした資格を保有している方の採用実績も多いです。
・ビジネス戦略についての理解:ベンチャーキャピタルでは、市場動向や競争環境の分析が必須であるほか、投資先企業の成長戦略についての評価や助言する能力も必要です。
・ネットワーキングスキル:業界内外で人脈を築く能力が必要です。
次のような経験がある方はベンチャーキャピタルで採用されやすいとされます。
・スタートアップや新規事業の立ち上げ経験がある:会社や事業の立ち上げ経験は、投資先企業への支援に役立つため、優遇されます。
・金融機関やコンサルティングファームでの業務経験がある:金融機関、特に投資関連の業務経験やコンサルティングファームでの経験があると、ベンチャーキャピタルでの仕事に親和性があると評価され、優遇されやすいです。
ベンチャーキャピタルの応募要件・選考内容
多くのベンチャーキャピタルでは、応募要件に次のような内容を盛り込んでいます。
・学歴:大学卒業以上。ビジネスや経済学の学位があるとより評価されます。
・職務経験:金融業界やコンサルティング業界、スタートアップや新規事業の経験が重視されます。これらのうちいずれかを「5年以上経験しているもの」など経験を必須とする企業もあります。
・スキル:財務分析に関するスキルを求める企業が多いです。
上記の経験がない方や財務分析に関するスキルがない方でも採用される可能性はありますが、難易度は高くなります。
続いて、ベンチャーキャピタルの選考について説明します。
選考は、書類選考の後、複数回の面接が行われることが多いです。面接では、志望動機やビジネスについての理解・関心が見極められる傾向にあります。前述の適性や応募要項に合った人材かが問われるといえます。
ベンチャーキャピタルの転職を成功させるコツ
ここまで、ベンチャーキャピタルの特徴や求められる人材について解説してきましたが、選考の対策としては、次のようなことが挙げられます。
・継続的なスキルアップ・知識の収集を行う
・人脈を広げる
・中長期的なキャリアを見据える
・ベンチャーキャピタルの転職に強いエージェントを活用する
それぞれについて詳しく解説します。
継続的なスキルアップ・知識の収集を行う
ベンチャーキャピタルでは、根幹となる財務や経営、各業界についての知識のほか、市場環境に合わせた最新の知識が求められます。特に、ビジネストレンドや技術に関する知識のアップデートは重視されます。面接でも問われることが多いため、自発的にスキルアップや知識の収集を行うことが重要です。
人脈を広げる
広い人脈を築くことでベンチャーキャピタルで成果を出しやすくなります。投資先企業の経営者や他の投資家と関係を築くことで、重要な情報交換ができ、新たな投資機会を得ることにもつながるためです。イベントや勉強会を活用するとよいでしょう。
中長期的なキャリアを見据える
ベンチャーキャピタルで働く上では、何に関わり、どのような経験を積みたいのかを明確にすることが重要です。面接では明確な志望動機を伝えられるかどうかが鍵になるため、できるだけ具体的なキャリアビジョンを描けるとよいでしょう。
ベンチャーキャピタルへの転職に強いエージェントを活用する
ベンチャーキャピタルの転職は難易度が高いとされます。ベンチャーキャピタルの転職に強いエージェントを活用することで、企業とマッチングしやすくなることはもちろん、選考にあたっての自身のスキルの棚卸しやキャリアビジョンの明確化が行えます。難関とされるベンチャーキャピタルの選考対策を行ってくれるエージェントもいるため、積極的に活用しましょう。
ベンチャーキャピタル・転職エージェント おすすめ10選
ここではベンチャーキャピタルの転職に強いエージェント10社を紹介します。
各エージェントの特徴や得意分野について解説しますので、参考にしてください。